不眠症とは
不眠症は睡眠障害のひとつで、睡眠に何らかの問題がある状態を言います。 睡眠は人間にとって必要不可欠なものです。 睡眠の質が低下すると日中の眠気や集中力低下、作業効率の低下など心と身体に様々な影響を及ぼすことがわかっています。 現在、日本人の5人に1人は「睡眠で休養が取れていない」、「何らかの不眠がある」と言われており、60歳以上になると約3人に1人が何らかの睡眠問題で悩んでいるという報告もあります。 不眠症は、現代社会では一般的な疾患と言えます。
不眠症の種類
不眠症には以下の種類があります。
上記以外にも、高血圧や糖尿病など様々な生活習慣病と関係した睡眠障害があり、それぞれに適切な対応や治療を行い、症状の改善を図る必要があります。
不眠症のタイプについて
以下の4つのタイプに分類されます。
眠りにつくまでに時間がかかる状態です。通常、30分~1時間経っても入眠できない場合、不眠症と言われます。 しかし、入眠にかかる時間は人によって千差万別です。時間がかかっている場合でも、日常生活に支障がなければ無理に治療をする必要がない場合もあります。
一旦眠りについても、夜中に目が覚めてしまう状態です。 睡眠中は深い眠りと浅い眠りを繰り返しており、浅い眠りの時間が長く続くと、目が覚めてしまいます。アルコールや加齢も睡眠に影響し、睡眠の維持が困難になります。
起きようと思う時間、あるいは普段より2時間以上前に目が覚めてしまい、その後再入眠が取れないという状態です。 睡眠の浅さが関係していると言われておりますが、うつ病などの心の病気が原因の場合もあります。
途中で目が醒めることはありませんが、眠りが浅く、ある程度睡眠時間をとっても熟睡できていないと感じる状態です。 うつ病などの心の病気や睡眠時無呼吸症候群などが影響していることもあります。
不眠の原因
極度のストレスや緊張は睡眠に影響を与えます。不眠が続くと「また眠れなかったらどしよう」と不安になり、「早く眠らないと」と焦ることで、さらに目が冴えてしまい、悪循環を引き起こします。 また、多くの心の病気は不眠を伴います。不眠以外の症状がないかをしっかり調べることも大切です。
他にも生活習慣病、アレルギー症といった身体の病気や薬の副作用、カフェインやニコチンなどの刺激物、時差や交替勤務制による体内リズムの乱れ、さらには騒音や光など環境要因から不眠となる場合もあります。
注意欠如多動症(ADHD;Attention-deficit/hyperactivity disorder)とは
注意欠如多動症は注意欠如・多動性障害とも呼ばれ、注意力や多動性、衝動性のコントロールが苦手な疾患で、発達障害の中の一つです。 ADHDの特徴を持ちながらも、日常生活に大きな支障なく過ごされている方もいますが、一方で生きづらさを感じたり、トラブルを抱えている方も沢山いらっしゃいます。 ADHDは生まれつきの脳の働き方の違いによって生じる特性や個性であるため、症状の程度は人により異なります。そのため、その方に合った対応や治療が必要となります。 以前は、ADHDの症状は成人になると軽快すると言われていました。しかし、近年の追跡研究では、一定の割合で成人後もADHDの症状が続くことがわかっています。 高校ぐらいまでは大きな問題がなかった方でも、進学や就職後に隠れていたADHD症状が目立つようになり、精神科受診に至る場合や、成人になりTVやインターネットでADHDのことを知り受診される方など、様々な方が受診されます。
※当クリニックでは成人の発達障害(注意欠如多動症、自閉スペクトラム症)の方の診断や治療に加え、小児科・児童精神科に通院されている、療育が必要な方や発達障害(注意欠如多動症、自閉スペクトラム症)の方の成人精神科への移行(トランジション)にも力を入れております。
手帳などをお持ちで、成人後の通院先が見つからないなど、お困りの場合はご相談ください。
注意欠如多動症の原因
原因はまだ明らかになっておりませんが、生まれ持った脳の微細な機能異常が元で起こると考えられています。ADHDは育て方や性格の問題によって起こるものではありません。
発症には複数の遺伝子の影響に加え、妊娠期間中の喫煙やアルコールの問題、ある種の化学物質など、様々な誘因が影響し、発症のリスクが高まるのではないかと推測されています。
また、脳内の神経伝達物質のうち、ドパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの働きが低下している為に、脳内のネットワークが乱れ、報酬系の障害(待つべき時に待てない)、実行系の障害(順序立てて行動ができない)などが影響し、ADHDの症状が表れるのではないかと考えられています。
注意欠如多動症の症状
ADHDの特徴は、「不注意(注意を持続することができない)」、「多動性(落ち着きがなく、じっとしていられない)」、「衝動性(思ったことをすぐ口にする、行動する)」があります。
具体的な症状は以下の通りです。
※全ての方に上記の症状が当てはまるわけではありません。症状の有無、程度は人により様々です。
これらの症状のため、周囲から失敗を責められることや厳しい指導を受けることが多くなると、うつ状態や対人緊張、不安などが強まり、日常生活や社会生活に支障をきたすようになります(二次障害※)。
また、ADHDはうつ病、双極性障害、不安症、自閉スペクトラム症など、他の精神疾患の合併率の高さが注目されています。合併する疾患の症状の方が目立っていると、ADHDの症状が分かりにくく、治療が遅れてしまうこともあるため、注意が必要です。
※二次障害:発達障害のある方は、その特性からストレスを感じやすく、うつ状態や不安、緊張感、他の精神疾患の合併や引きこもりなど、社会での不適応を引き起こしやすい傾向があるといわれています。 発達障害の特性が影響し、二次的に様々な症状が生じることを二次障害といいます。
注意欠如多動症の診断
成人のADHDは成長過程の中で様々な要素が積み重なってゆくため、子ども以上に診断や判断が難しい場合も少なくありません。そのため、本人や可能なら家族の方からもお話しをおうかがいし、診断する上での参考にさせていただいております。 また、ADHDの症状が幼少よりあったか、複数の場面で症状を認めるか、他の精神疾患や身体疾患による影響がないかなども診断をする上でのポイントになります。必要に応じて、知能検査(WAIS-Ⅳ)などの心理検査などを行い、最終的に診断を確定します。
注意欠如多動症の治療について
成人のADHDは成長過程の中で様々な要素が積み重なってゆくため、子ども以上に診断や判断が難しい場合も少なくありません。そのため、本人や可能なら家族の方からもお話しをおうかがいし、診断する上での参考にさせていただいております。 また、ADHDの症状が幼少よりあったか、複数の場面で症状を認めるか、他の精神疾患や身体疾患による影響がないかなども診断をする上でのポイントになります。必要に応じて、知能検査(WAIS-Ⅳ)などの心理検査などを行い、最終的に診断を確定します。
心理社会的療法について
ADHDの症状に対して適切な援助をする、あるいはADHDの方自らが、状況に応じて適切な行動が取れるようにサポートしてゆきます。 その為には自分の特性を知ることに加え、環境調整を行うことも検討します。また、ご本人がより力を発揮できるように支援する側が特性を理解した上でサポートを行うことも大切なポイントです。
薬物治療について
心理社会的治療を行った上でも、生活に支障がある場合や二次障害が強い場合は薬物療法を検討します。
現在日本では、4種類のADHD治療薬があります。ADHD治療薬を併用することで、不注意、多動性、衝動性といった、ADHDの中核症状を軽減し、生活の支障を和らげることが期待できます。
ADHDの特性がある方は、その特性から成功をする体験が少ないため、自分に自信を持てない人が多く、また、人と接する際に過剰に不安、緊張を感じることあります。
ADHD治療薬の直接的な効果ではありませんが、症状が軽減した状況が続くことで失敗や周囲から叱られることなどが減るため、結果的に自信をもって行動ができるようになります。
ADHD治療薬には以下の薬剤があります。
・中枢神経刺激剤:コンサータ®(メチルフェニデート)
ビバンセ®(リスデキサンフェタミン)
・非中枢刺激剤 :ストラテラ®(アトモキセチン)
インチュニブ®(グアンファシン)
それぞれのADHD治療薬処方の注意点、効果、特徴、副作用などは「ADHD治療薬の処方を希望される方へ」をご覧ください。
全てのADHD治療薬は医師が診察し、治療上必要と判断した場合に限り処方を行なっております。
ADHD治療薬は心理社会療法と組み合わせることで、ADHDの中核症状の軽減を図ることができ、生活の支障を和らげることができます。 しかし、ADHD治療薬のコンサータ®・ビバンセ®には依存や乱用のリスクがあるため、日本ではADHDの診断、治療に精通した医師でないと処方ができません。 患者さんにも正しい知識を得た上で、薬物療法の必要性を判断してゆく必要があります。ADHDの特徴、症状、原因、診断、治療などについてもう一度ADHDの項目をご覧ください。
以下にADHD治療薬の注意点をまとめてあります。併せてご覧ください。
ADHD治療薬に関する大切なお知らせ(ADHD適正流通管理システムについて)
2019年12月より、注意欠如多動性障害(ADHD)を効能・効果とする中枢神経刺激剤であるコンサータ®・ビバンセ®の処方・ 調剤にあたっては,適正な流通管理及び適正使用の推進のために、患者さんに関する情報を「ADHD適正流通管理システム」に登録することかが必要となりました。
これは、これらの薬剤に、不適正な使用による依存や乱用のリスクがあるためです。
そのため、2021年1月以降はADHD適正流通管理システムにて処方を許可されたADHDの診断、治療に精通した医師でないとコンサータ®・ビバンセ®の処方を行うことができなくなりました(インチュニブ®、ストラテラ®の処方は登録無しで処方できます)。
当クリニックではコンサータ®・ビバンセ®の処方は可能です(繰り返しになりますが、診察の上、必要と判断された場合に限ります)。
処方をするにあたり、患者様に同意を得た上で、ADHD適正流通管理システムに登録する必要があります。登録をしていないと処方ができません。
※初めて登録される方は、第三者からの症状に関する情報が必要となります(通知表、母子健康手帳、連絡帳など、それらが無い場合は、父母、友人、上司、同僚など日常生活を知っている方からの症状報告書などのご持参をご検討ください。
未成年の場合は、保護者の同意が必要です。情報を登録後に処方が可能となります。
※受診の際、薬局で処方箋を出す際はその都度『患者カード』の提示をお願いいたします。
提示がない場合はコンサータ®・ビバンセ® の処方を行うことができません。
※他院でコンサータ®・ビバンセ®の処方を受けており、転居などで当クリニックに転院される方は、必ず『患者カード』をご持参した上での来院をお願いいたします。
※『患者カード』を紛失した際は、お申し出ください。再発行の手続きをいたします。
※ビバンセの処方については、18歳未満の方、あるいは、日本国内でビバンセの処方を受けており、18歳の誕生日を迎えた後も、継続して内服されている方に限ります。 18歳以上の方の新規の処方は規則によりできません。ご注意ください。
ADHD治療薬について
ADHD治療薬は日本国内で使用できるものは4剤あります(18歳以上の方が使用できるのは3剤のみです)。
これらの治療薬は他の精神科で扱う薬剤同様、診察の結果、医師が必要と判断した場合にのみ処方の検討を行います。
それぞれの特徴は以下の通りです。
よくある質問
Q.ADHD治療薬は誰でも処方してもらえるのでしょうか?
A.診察の結果、必要があると判断された場合のみです。処方のご希望があっても、薬物療法の必要性が少ない場合は処方することはできません。
※当クリニックでは過去に処方薬の依存、乱用歴がある方、リスクが高い方への投薬は控えております。
Q.薬を飲むことでADHDの症状は軽減するのでしょうか?
A.ADHD薬はあくまで症状を改善する上での補助的な手段の一つです。薬物療法開始後も、心理社会療法を継続してゆく必要があります。
Q.薬は飲み始めたら一生飲まないといけないのでしょうか?
A.心理社会的療法と薬物療法を併用することで、生活や仕事の中でどのようなことに注意すべきかなどのコツがつかめるようになります。
そのコツは薬をやめても忘れることはありません。そのため、薬を飲まなくても行動や考え方の工夫をすることで、上手く生活ができるようになる方もいます。
そのため、長めの休みの時などに休薬を提案し、薬物療法の必要性について適宜判断してゆきます。1年に1回程度は休薬期間を作ることをお勧めしております。
Q.ADHD薬剤はどのように選ぶのでしょうか?
A.どの薬剤を第1選択にするかなどを記載したガイドラインなどは現時点ではありません。 それぞれの薬剤の特性、副作用、基礎疾患の有無、仕事や生活スタイルなどを伺った上で、その方に適した薬剤を決定いたします。
自閉スペクトラム症(ASD;Autism Spectrum Disorder)とは
自閉スペクトラム症は生まれながら発達に派手なデコボコ(苦手さ)があるために、「臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心・やり方・ペースの維持を最優先させたいという本能的志向が強い」といった特徴が現れやすい、発達障害の中の一つです。
これまでは自閉症、非定型自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害、特定不能の広汎性発達障害など、発達の遅れが目立った時期、知的能力の違いなどから病名を分類しておりました。
しかし、2013年のアメリカ精神医学会(APA)の診断基準「DSM-5」の発表以降、本質は、一つの疾患の連続体(スペクトラム)であると捉え、上記の病名を1つにまとめ、「自閉スペクトラム症」と呼ばれるようになりました。
自閉スペクトラム症で認められる特性の有無やその程度は人により様々です。そのため、その方に合った対応や治療が必要となります。
自閉スペクトラム症の原因
原因は不明ですが、生まれつきの脳機能の異常によるものと考えられています。これまでの研究から育て方やしつけが原因ではないことがわかっています。 発症には複数の遺伝子の影響に加え、妊娠期間中の喫煙やアルコールの問題、ある種の化学物質など、様々な誘因が影響し、発症のリスクが高まるのではないかと推測されています。
自閉スペクトラム症の特徴
以下の4つのタイプに分類されます。
※全ての方に上記の症状が当てはまるわけではありません。症状の有無、程度は人それぞれです。
自閉スペクトラム症の特性を持っている方は、社会で大成功を収めたり、少々変わった人程度で済んでいる方もたくさんいらっしゃいます。
しかし、一方で、日常生活を送る中で生きづらさを感じ、周囲からはその辛さをわかってもらいにくいため、集団での適応が上手くいかず、うつ状態、不眠、先々の不安などを感じ、受診される方もいらっしゃいます。社会生活に何らかの生きづらさを感じているようであれば、受診をご検討下さい。
自閉スペクトラム症の診断
高校ぐらいまでは大きな問題が起こらなかった方でも、進学や就職後から隠れていた特性が目立つようになり、生活や仕事に支障をきたし、精神科受診される方が増えております。 診断を行う際は、成人になってから問題を感じている場合でも、受診時の症状や状態だけでなく、幼少より特性が認められていたか、複数の場面で症状を認めるか、他の精神疾患や身体疾患による影響がないかなどを確認した上で、診断を行います。 診断の補助目的やその方の特性をより詳しく調べる目的で、知能検査(WAIS-Ⅳ)などの心理検査を行うこともあります。
自閉スペクトラム症の治療
国内外で治療薬の開発が行われていますが、自閉スペクトラム症の根本的な治療法はまだ存在しません。このため、個々の特性を理解した上で、特性に応じた対応や、環境調整、カウンセリングなどを組み合わせて治療を行います。 自閉スペクトラム症の特性がきっかけで、二次的に精神症状が出現した際(二次障害※)は、薬物療法を行うこともあります。
※二次障害:発達障害のある方は、その特性からストレスを感じやすく、うつ状態や不安、緊張感、他の精神疾患の合併や引きこもりなど、社会での不適応を引き起こしやすい傾向があります。発達障害の特性が影響し、二次的に様々な症状が生じることを二次障害といいます。
自閉スペクトラム症の治療
心理社会的心理療法は自閉スペクトラム症の特性に対して適切な援助を提供する、自閉スペクトラム症の患者さん自らが状況に応じて、適切な行動が取れるように支援するための治療法です。
大切なことは「障害」ではなく他者との「違い」と捉え、「治す」ではなく「理解する」という視点です。
心理社会的療法を行うことで、ご本人が日常の中でより過ごしやすく生活や仕事が出来るようになるだけでなく、自己肯定感が高まることにより、二次障害の発生を防ぐことにもつながります。
その為には自分の特性を知ることや環境調整などが大切です。また、支援する側が特性を理解した上でサポートを行うことで、ご本人がより効果的に力を発揮できるようになります。 当クリニックでは医師が必要と判断した場合は、WAIS-Ⅳなどの心理検査を行い、その方の得意不得意の傾向を精査します。その結果を参考に、対応のアドバイスや環境調整を行います。
検査結果は患者さんご本人に結果の報告書をお渡しし、説明を行います。ご本人のご希望があれば、学校や職場に情報提供することも可能です。
うつ病とは
気分の落ち込みや、憂うつな気分、何をしても楽しくない、もの悲しいなどの精神的な症状や、眠れない、食欲がない、疲れやすいなどといった身体症状が続くため、日常生活や仕事に支障が生じる病気です。 几帳面、完璧主義、生真面目で責任感が強いなどの性格傾向の方はうつ病になりやすいと言われています。
うつ病の原因
発症の原因は正確にはよくわかっていませんが、脳内の神経伝達物質である、セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンなどの機能低下が関与し、感情や意欲をつかさどる脳の働きに何らかの不調が生じるため、うつ病を発症するのではないかと考えられています。
辛い体験や悲しい体験など、ネガティブなことだけでなく、引っ越しや転職などの環境の変化、昇進や目標を達成した際の嬉しい出来事の後に発症することもあります。
また、甲状腺機能低下症や更年期障害などのホルモンバランスが崩れる病気や一部の薬剤の副作用がうつ病発症の原因となることもあります。
うつ病で認められる症状
うつ病の診断
誰にでも気分が落ち込むことや食欲が落ちるといった経験はあると思います。脳が健康な状態であれば、時間の経過と共に元気になるのが通常です。 しかし、上記の症状が続き、一向に改善しない場合や悪化する場合はうつ病が疑われます。また、気分落ち込みはそれほど目立たないものの、倦怠感、頭痛、肩こりなど、身体の不調が続き、様々な病院で検査をしても原因が分からない場合があります。 そういった状態の時は仮面うつ病の可能性もあります。
注意しなければならない点は、双極性障害によるうつ状態です。 うつ病の気分の落ち込みと双極性障害 のうつ状態はその時の状態だけでは区別がつかないことがあります。 気分の波の有無、過眠・過食、妄想などの精神病症状、若年発症(<25歳)、不調を繰り返している、双極性障害の家族歴、抗うつ薬が無効などの特徴がある場合は双極性障害も疑い、より慎重に診断、治療を行う必要があります。
うつ病の治療
うつ病は脳の機能が低下している状態です。休息を取り、身体面、精神面の回復(脳の機能の回復)を促す必要があります。 症状が重い場合は休職、休学などを検討し、十分期間休息をとっていただくこともあります。 休息することに対して、「自分はこんなに怠けていていいのだろうか」などと気に病んだり自分を責めたりしないようにしてください。 「休むこと」が治療であり、病気を治すために必要なことです。 休息が必要な際はしっかり休みましょう。
※リハビリの一環として、リワークデイケア(職場復帰に向けたリハビリ)、就労移行支援 事業所(仕事をするためのリハビリ)を利用し、回復をサポートする方法が徐々に浸透してきており、有用な手段であると思います。 当クリニックでもこれらのサポートを他の施設と連携して行うことが可能です。ご相談ください。
薬物治療について
十分な休息で病状の改善が乏しい場合や病状が重い場合は薬物療法が必要になります。休息と薬物療法を併用することで、回復のスピードが上がり、日常生活や社会生活への復帰の時期が早くなることが期待できます。
主に使用する薬剤は抗うつ薬になります。抗うつ薬はバランスの崩れた脳内の神経伝達物質の働きを回復させることで、うつ病の症状改善を図ることが期待できます。
抗うつ薬はいくつかの種類があります。効果の特徴や副作用の種類が異なるため、状態に適した抗うつ薬を選択し、治療を行います。
主に使用される抗うつ薬には以下の薬剤があります。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)
セロトニン再取り込み阻害・セロトニン受容体調整剤(S–RIM)
上記で効果が乏しい場合は、三環系抗うつ薬などを使用することもあります。
双極性障害(躁うつ病)とは
双極性障害は、気分の落ち込み、意欲の低下、不眠などを認めるうつ状態(うつ病相)の時期と、それとは対照的に、テンションの高さが目立つ状態、意欲の亢進、浪費、睡眠欲求の減少などの躁状態(躁病相)の時期を繰り返す慢性の精神疾患です。躁うつ病とも呼ばれます。
双極性障害の方はうつ状態の時に、気分の落ち込み、不眠などを感じ、受診することがほとんどです。躁状態の時は病気であるという実感が少ないため、受診に至ることは稀です。
双極性障害の場合、「躁状態」を呈すると、その後「うつ状態」になることが多く、躁状態の時期よりもうつ状態の時期が長いことが一般的です。躁状態は生涯で数回とう方もいらっしゃいます。
うつ病と診断され、治療を受けていた方が後に躁状態となり、診断が双極性障害に変わることもあります。
双極性障害の原因
双極性障害の正確な原因は分かっていませんが、脳内の神経伝達物質の情報伝達の乱れによって躁状態とうつ状態を繰り返すと考えられています。
ストレスが1つの誘因となり、双極性障害を発症することがありますが、直接的な原因ではありません。
甲状腺ホルモンの量が過剰になる甲状腺機能亢進症など、特定の病気に伴い双極性障害の症状が現れることもあります。
双極性障害の症状
躁状態とうつ状態では認められる症状が全く異なります。
※躁状態とうつ状態が混在する混合状態を呈することもあります。
双極性障害の診断
躁状態やうつ状態の確認や他の身体の病気の症状の有無、服薬状況などから総合的に診断します。甲状腺機能の影響などを採血検査で精査する場合もあります。
双極性障害の治療
双極性障害は「躁状態」と「うつ状態」の波をいかにコントロールするかが目標になります。
薬物療法
基本的には気分の浮き沈みを抑える作用のある薬剤を使用して治療を行います。 気分安定作用のある薬剤は、リーマス®(炭酸リチウム)、デパケン®(バルプロ酸)、テグレトール®(カルバマゼピン)、ラミクタール®(ラモトリギン)があります。双極性障害のうつ状態の時は非定型向精神病薬である、ビプレッソ®、セロクエル®(クエチアピン)、ジプレキサ®(オランザピン)、エビリファイ®(アリピプラゾール)、ラツーダ®(ルラシドン)などを使用することもあります。
非薬物療法
双極性障害は、治療せずに放置すれば多くの場合再発してしまいます。再発を防ぐためにも薬物療法を続けることが重要です。
薬物療法に加え、日常生活や症状出現時の工夫などを組み合わせることで再発を防ぎやすくなります。また、躁状態を経験すると、「軽い躁状態の時」=「落ち着いている状態」と思ってしまいます。躁状態の後にうつ状態に移行することが多いため、「少し物足りないぐらいの状態」を目標にするとが再発を防ぐポイントになります。そのため、患者さんにも病気の特徴を理解してもらう必要があります。
外来受診時には、再発しないための工夫に加え、薬物療法を継続することの必要性や再発を疑う症状の確認などを都度行なってゆきます。また、再発のきっかけになりやすいストレス因を予測し、それに対する対処法なども一緒に考えて行きます。
気分の変化をより早く気付けるように1日の活動や睡眠状況、その日の調子などを生活リズムチェックシート(当クリニックに用意してあります)に記載をお願いすることもあります。
適応障害とは
適応障害とは、環境の変化や人間関係のストレスなど、生活上の出来事によって強いストレスを受けた際に、精神症状、身体症状、または行動面に症状が現れ、社会生活や日常生活に支障をきたす心の病気です。
適応障害の原因
ストレスが誘因となります。嫌なことやつらいことだけでなく、病気や疲労、睡眠不足など、様々なことが重なると発症しやすくなります。また進学、就職や転職、結婚や出産、引っ越しなど喜ばしいと思われる出来事もストレスを引き起こす誘因となることがあります。
適応障害の症状
気分の落ち込み、不安、怒り、焦りや緊張などの情緒面の症状や動悸、めまい、頭痛、吐き気、便秘や下痢などといった、自律神経の乱れに関係した症状に加え不眠、食欲低下などの症状がみられることがあります。 うつ病と共通する症状もありますが、違いとしては、適応障害ではストレス因から離れると症状が改善することが多いです。これに対して、うつ病は環境が変わっても気分は晴れにくく、気分の落ち込みや意欲の低下、億劫感、食欲の低下、不眠などが持続します。
適応障害の診断
適応障害で現れる症状は他の精神疾患や身体疾患でも認めることがあります。そのため、適応障害以外の疾患でないことを確認した上で診断を行います。(除外診断)。 ただし、適応障害の症状が他の精神疾患の始まりである可能性もあるため、適応障害と診断した後も他の精神疾患の可能性を常に念頭に置いて診察、治療を行う必要があります。
適応障害の治療
大切なことは誘因となるストレスの軽減です。職場にストレスの誘因がある場合は、本人、職場とで働き方、仕事の内容などを再検討していただく場合があります(ご本人、職場双方が納得できるような環境調整を行うなど、ストレス軽減策を考えることが理想的です)。
症状が強く、日常生活に支障がある時は、休職し、休息を優先する場合があります。誘因となるストレスを完全に排除することは困難なことが多いため、ストレスとうまく付き合いながら生活をすることや、ストレスの対処方法やストレスを感じた時の考え方などを診察の中で一緒に考え、サポートします。
不眠、不安、緊張感、気分の落ち込みなどが強ければ、補助的に薬物療法を行い、症状を抑えながら、非薬物療法を行います。
パニック症(パニック障害)とは
何の前触れもなく乗り物、人ごみ、閉鎖空間などで急に命の危険を思わせる不安や恐怖を感じ、それに身体も反応することで、動悸、めまい、発汗、息苦しさ、吐き気、手足の震えなどが出現し(パニック発作)、生活に支障をきたす病気です。 一度パニック発作が起きると、また同様のことが起きたら・・・という不安が強くなります(予期不安)。 そのため、発作が起きやすい場所や状況を避けるようになります(広場恐怖)。 状態が改善しないと、外出することを避け、引きこもる時間が増えるため、生活への支障がさらに大きくなります。
パニック症の原因
メカニズムや原因は完全には明らかになっておりませんが、人が危険な場面に遭遇したときに働く脳の神経機能の異常によってパニック症がおきると考えられています。 また、脳内の神経伝達物質の異常も強く影響しているといわれています。過労、睡眠不足、ストレス、体調不良などが重なると発症のリスクが高まります。
パニック症の主な症状
何の前触れもなく突然生じる動悸、息苦しさ、めまいなどを起こす発作です。 パニック発作が起きているときは「自分は死んでしまうのではないか」と思うほど辛く、病院に駆け込むことや救急車を呼ぶこともあります。 しかし検査では、異常は認められません。
パニック発作を経験すると、また同様の発作が起きるのではないかという不安が生じる状態です。 予期不安が強まると発作を避けるために、外出しない、仕事を辞めるなど、行動面での変化も現れます。不安は発作を繰り返すごとに強くなります。
いつ生じるかわからない発作に備えて、助けを求められない状況などを避けようとすることを広場恐怖といいます。 広場だけに限らず、人混み、乗り物、高速道路、閉鎖空間など、助けを求めにくい場所を避けるようになります。
パニック症の診断
診察を通して、これまでの経過や症状を確認し、診断を行います。 パニック症と類似した症状を呈することがある心臓疾患や甲状腺機能亢進症などの身体疾患を否定するために、血液検査、心電図を行うこともあります。
パニック症の治療
パニック症は薬物療法が効果を発揮しやすい病気です。
主に使用される薬剤は、不安の軽減を目的に、抗うつ薬である選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI;パキシル®、ジェイゾロフト®、デプロメール®、ルボックス®、レクサプロ®)を使用します。
抗不安薬もしばしば使われます。
薬の効果が得られると発作が起こりそうな状況で不安を感じることが少なくなります。
不安が軽減後、体調や状態に合わせて今まで避けていた場所や状況に足を運んで頂き、症状が出ないことを実際に体験してもらいます。
「不安な場所、状況でも落ち着いて過ごすことができた」という経験を何度も繰り返すことで、時に不安を感じたとしても、「いつもは大丈夫だから」と思えるようになり、落ち着いて生活できるようになります。
自律神経失調症とは
自律神経とは身体を活発に動かす際に働く「交感神経」と、身体を休ませる際に働く「副交感神経」の2つに分かれます。
この2つがお互いにバランスをとり日々の体調を整えています。
しかし、睡眠不足・食事の変化・ホルモンの変化などや会社、家庭のストレスなどによって自律神経のバランスが乱れると身体や心にも影響が出てしまいます。
この状態を「自律神経失調症」といいます。
自律神経が乱れると、めまい、肩こり、頭痛、倦怠感、疲労感、熱っぽさ、手足のしびれなどが現れますが、これらの症状は検査をしても原因が見つからないことがほとんどです。
自律神経失調症の原因
自律神経のバランスが崩れる直接的な原因は特定できませんが、ストレスや生活習慣の乱れが間接的に影響していると考えられています。 緊張や不安、悩み事や睡眠不足など、一つ一つは小さなことでも、それらが長期間続いたり、いくつも重なることで大きな負担となり、自律神経が乱れ、症状が出現すると考えられています。
自律神経失調症の症状
自律神経のバランスが崩れると、全身状態や循環器や呼吸器、消化器、泌尿器、生殖器、感覚器などに関連した身体症状や精神症状が出現します。
自律神経失調症の診断
自律神経失調症は、医学的に正式な疾患名ではないため、統一された定義や診断基準はありません。 しかし、実際の診療場面では、自律神経の乱れから不調を感じる方はたくさんいらっしゃいます。 症状があるにも関わらず検査では異常が見られない場合などは暫定的に「自律神経失調症」と診断をつけることがあります。 また、他の精神疾患の症状の一つとして自律神経の症状を認めることも多いため、他の精神疾患の有無も調べてゆきます。
自律神経失調症の治療
まずはストレスのコントロールと規則的な睡眠や食事など、生活習慣の改善が必要です。 加えて、散歩や体操などといった軽い運動、入浴、音楽を聴くなどのストレス発散や気分転換も意識するようにしましょう。 これを機に新たなストレス発散法や気分転換の方法を探し、実行してみることもお勧めです。 上記の方法を行っても改善が少ない場合は、対処療法的に薬物療法を実施します。 具体的には、お腹の具合が悪ければ整腸薬、眠れない場合は睡眠薬などといった、症状にあわせた薬物療法を実施します。
※リハビリの一環として、リワークデイケア(職場復帰に向けたリハビリ)、就労移行支援 事業所(仕事をするためのリハビリ)を利用し、回復をサポートする方法が徐々に浸透してきており、有用な手段であると思います。 当クリニックでもこれらのサポートを他の施設と連携して行うことが可能です。ご相談ください。
統合失調症とは
統合失調症とは、考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続く病気で、その原因は脳の機能に問題があると考えられています。
統合失調症の発症には、国や地域、民族、性別などによる差はほとんどみられません。有病率は人口の約1%(100人に1人程度)であり、珍しい病気ではありません。
脳の機能が一部正常に働かなくなることで、幻覚や妄想といった陽性症状と意欲の低下、活動性の低下、外部に興味がわきにくくなるなどといった陰性症状、集中力、記憶力、問題解決能力などに支障が出る認知機能障害が症状として認められます。
統合失調症は慢性疾患であり、長い経過をたどります。10代後半〜30代に発症することが多く、稀に高齢になってから発症するケースもあります。
統合失調症は自分が病気であるという自覚を持ちにくい疾患の1つです。病状を悪化させいないためにも自分の病気のことを知った上で治療を続けることが大切です。
統合失調症の原因
統合失調症の発症の原因ははっきりわかっていませんが、下記のような仮説があります。
ドパミン仮説
脳をはじめとする神経系の機能に障害が起きる病気と考えられており、脳内の神経伝達物質であるドパミンやセロトニンなどが発症に関係があると言われています。
ストレス・脆弱性仮説
ストレス・脆弱性仮説は、様々な要因が積み重なり発症するのではないと考えられている仮説です。 遺伝、脳のトラブル、性格や気質などといった元々の要因である「脆弱性」に、環境やライフイベント、病気といった日常で生じるストレスが重なり発症するのではないかと考えられています。
統合失調症の症状
発症当初は、「陽性症状」が主な症状であることが多いです。 徐々に「陰性症状」や「認知機能障害」が目立ち、生活に支障をきたします(時に陰性症状が主体で、時に陽性症状を認める経過をたどる場合もあります)。
統合失調症の診断
統合失調症を正確に診断するような検査は存在しません。患者さんが訴える妄想や幻覚などの陽性症状や陰性症状を詳細にうかがい、診断を行います。
甲状腺機能障害、脳炎などでは統合失調症に類似した症状を呈することがあります。疑わしい場合は、検査を行い、除外をした上で診断を行います。
統合失調症の治療
統合失調症の治療は薬物療法と心理社会的な治療(リハビリテーションや精神療法)を組み合わせて治療を行います。
薬物療法
統合失調症は慢性疾患です。まず、症状の改善や、進行を抑える目的で、薬物療法を行います。症状がよくなっても、再発を防ぐ目的で、内服を継続する必要があります。
統合失調症に用いられる主な薬剤は「抗精神病薬」と呼ばれます。抗精神病薬には幻覚や妄想などの陽性症状を改善する作用、不安感や不眠などの症状を改善する作用、感情や意欲の低下などの陰性症状を改善する作用などがあります。
抗精神病薬には様々な種類や剤型、副作用があるため、状態に合った薬剤を選択し、治療を続けます。
現在は抗精神病薬の中でも副作用の少ない非定型抗精神病薬で治療することが主流です。非定型抗精神病薬には以下のものがあります。
抗精神病薬の再発予防効果
統合失調症は再発しやすい疾患であり、統合失調症の予後についてはいかに薬物療法を継続できるかにかかっています。
内服を中断すると、2年以内に80%以上の方が再発するという報告もあります。
再発してしまうと、以前よりも病状が重くなることや、抗精神病薬が効きにくくなる場合があります。服薬は長期間に渡って必要となることを理解し、治療を続ける必要があります。
時に内服を減らしたい、やめたいと思うことは誰でもあると思います。そう思った際は、まずは相談ください。
心理社会的治療(リハビリテーションや精神療法)
統合失調症の方は社会生活のさまざまな場面で苦手さや不都合さを感じています。
また、感情表現や人付き合い、日常生活の基本的なこと、リラックスすることなどにも困難を感じます。それらの能力を回復させるためにリハビリテーションが必要となります。
リハビリテーションは日々の生活の中でもできますが、デイケア、作業所などに通所することで、社会とのつながりを持ちながらリハビリを行うことができ、有効と考えられています。
当クリニックにはデイケア、作業所が併設されていないため、利用される際は他施設と連携して治療を進めてゆきます。
精神療法については「支持的精神療法」を行います。支持的精神療法には患者さんを精神的にバックアップする、といった意味合いがあります。
患者さんが日々の生活の中で感じる不安や心配事を具体的に話し合い、解決の糸口を一緒に見つけていき、精神の安定を図り、日常生活の質を上げてゆきます。
不安症(不安障害)とは
誰しもが日々の生活の中で、不安を感じることはあります。就職、転職などで新しい環境を迎える時は大部分の人が不安を感じるでしょう。 不安があることで、事前に準備をしたり、対策を練ったりします。 適度に不安を感じることは人間が生活する上ではなくてなららないことです。しかしその不安が過剰になりすぎると日常生活に支障をきたします。
例)
このように、過剰な不安から日々の生活に支障をきたす状態を不安症と呼びます。
不安症には、 パニック症、 社交不安症、 強迫症など、いくつかのタイプがあります。
生活全般に過剰な不安が生じやすいものは全般不安症(全般性不安障害)と呼ばれ、健康面や家族、仕事や学校のことなどで不安が生じやすい病気です。
1つの不安が解消しても、新たに不安を感じることがあり、常に何らかの不安を抱えていることが多いです。
原因
原因は分かっておりませんが、遺伝的要因や神経質な性格、ストレスの強さや自律神経の乱れなどが発症に影響すると言われています。
不安に伴う症状として、落ち着きのなさ、集中困難、イライラ、不眠、さらには震えや吐き気、下痢や筋肉痛などの身体症状が現れることもあります。
治療について
精神療法の基本となるのは、支持的精神療法です。不安、緊張、恐怖などから一時的に機能不全に至った心の働きを治療者がサポートします。 受容的、共感的態度でお話をうかがい、患者さんが自らの感情や言葉で表現することを促します。それにより心の働きの回復を図り、現実の状況に適応できるようサポートしてゆきます。 また、ある出来事に対する認知(どう受け止めたのか、どのような見方をしたのか)を修正してゆくことで、歪んだ認知によって引き起こされる不快な感情や問題行動の軽減を図るといった認知行動療法的なサポートを行うこともあります。
薬物療法
抗不安薬、抗うつ薬などを使用することがあります。その方の症状や状態に合った薬剤を必要最低限使用します。 不安が強く、薬の効果が不十分であると、薬の量や種類が増えてしまうこともあります。当クリニックでは、多剤併用とならないよう、注意して薬物療法をおこないます。
社交不安症(社交不安障害)とは
社交不安症は不安症の病気の1つです。
人前で話す際に「恥ずかしい思いをするのではないか」と思い、不安や緊張してしまうことは誰もが経験します。
これ自体はごく自然なことですが、社交不安症の場合は、過剰な不安や緊張が生じ、他者からどのように見られているかなどを必要以上に気にしてしまいます。
不安や緊張の強さから、顔面紅潮や発汗、ふるえ、吐き気、腹痛などの症状が現れる場合もあります。
そのため、人が集まる場所など緊張しやすい場所を避けて生活するようになり、学業や就業などの社会生活に支障をきたします。
社交不安症の原因
原因はまだはっきりとわかっていません。しかし、セロトニンやドパミンなどの神経伝達物質のバランスが崩れ、神経が過敏な状態に置かれるからではないかと考えられています。 また、過去に人前で恥ずかしい思いをしたことがあるなどの経験的な要因、元々他人の目を気にしすぎる、人見知りなどの性格的な要因、遺伝的な要因などが発症に影響をすると考えられています。
社交不安症の主な症状
原因はまだはっきりとわかっていません。しかし、セロトニンやドパミンなどの神経伝達物質のバランスが崩れ、神経が過敏な状態に置かれるからではないかと考えられています。 また、過去に人前で恥ずかしい思いをしたことがあるなどの経験的な要因、元々他人の目を気にしすぎる、人見知りなどの性格的な要因、遺伝的な要因などが発症に影響をすると考えられています。
社交不安症の治療
精神療法
不安、緊張、恐怖などから一時的に機能不全に至った心の働きをサポートするために支持的精神療法を行います。
受容的、共感的な態度でお話しをおうかがいし、その方の感情の表出や言葉での表現を促すことで、不安の軽減や心の回復を図り、現実の状況に適応できるようにサポートしてゆきます。
不安を抱きやすい考え方のパターンを変えたり、不安の対処法を工夫したり、不安に慣れる訓練なども必要に応じて行います。
薬物療法
薬物療法では、不安を軽減することを目的に、抗うつ薬である選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI;パキシル®、ジェイゾロフト®、デプロメール®、ルボックス®、レクサプロ®)や抗不安薬を使用することがあります。
薬物療法開始後、症状が軽減したら、あえて不安を感じる状況に少しだけ身を寄せ、症状が出現しないことを実感してもらいます。状態をみながらできることを少しずつ広げてゆき、行動できる場所などを少しずつ広げてゆきます。
身体症状症とは
身体的な異常がないにもかかわらず、痛みや吐き気、しびれなどの身体症状が長い期間続く病気です。中には、体に力が入らなくなったり、けいれん発作のような症状が出現したりすることもあります。 身体症状は体のさまざまな場所に現れ、症状の種類も変化します。 多くの場合、身体症状のために仕事、学校、家庭など、日常生活を送ることに支障が出ます。身体の病気ではないということを受け入れることが難しく、医療機関を転々とする方もいます。
身体症状症の原因
心理的なストレスが要因となり、それが身体症状として表現されたものと考えられています。心身の疲労やライフイベントといった環境変化などがストレスの一因として考えられていますが、明確にはわかっていません。 完璧主義や神経質な性格傾向など認知や思考パターンが関連していると言われています。
身体症状症の症状
身体症状症はいくつかのタイプに分類されます。
痛みや胃腸症状などのさまざまな身体症状が続き、適切な診察、検査を行っても身体疾患による影響としては十分に説明できないという病状です。 *痛みが主なものを、従来は疼痛性(とうつうせい)障害と呼んでいました。
自分は重い病気ではないか?、病気にかかりそうだという不安が非常に強くなる病状です。実際には、身体の病気は存在しないか、あってもごく軽度で、気持ちの状態と実際の身体的な状態にギャップが生じます。 *従来は心気症(しんきしょう)と呼んでいました。
起きようと思う時間、あるいは普段より2時間以上前に目が覚めてしまい、その後再入眠が取れないという状態です。 睡眠の浅さが関係していると言われておりますが、うつ病などの心の病気が原因の場合もあります。
力が入らない(脱力・麻痺)、筋肉の強い突っ張り、歩けない、などといった運動に関する症状や、皮膚の感覚がおかしい、見えない(一部しか見えない)、聞こえない(聞こえにくい)、といった感覚の症状が認められます。 声が出ない、のどの中に異物感があるという感覚もしばしばみられる症状の一つです。
身体症状症の診断
身体症状があっても、それを引き起こすような身体疾患が存在しないことが診断の大前提となります。
現れている症状について身体の診療科にて診察を受けていただき、症状の元となるような病気がないことを確認します(初めから精神科・心療内科に受診することは稀で、身体の診療科の診察で問題がなく、その後、精神科・心療内科を受診するパターンがほとんどです)
身体疾患がないにも関わらず、さまざまな身体症状が続くときに初めて身体症状症と診断します。
身体症状症では、患者さん自身は実際にその症状によって苦痛を感じております。詐病や仮病とは異なるため、周囲の理解やサポートも必要となります。
身体症状症の治療
身体的な問題はないということを理解、納得することが大切です。
患者さんにとっては辛い症状なので、問題がないということを受け入れるには時間がかかる場合もあります。しかし、身体的な精査や、検査結果に基づかない治療を繰り返すことでは症状は改善しないばかりか、症状に苦しむ時間が長引くことになります。
症状がありながらも、普段に近い日常生活を送ることをまずは目標とし、薬物療法、精神療法を行います。
薬物療法
抗うつ薬や抗不安薬が有効な場合もあります。 痛みの症状が強い場合は、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI;トレドミン®、サインバルタ®、イフェクサー®)と呼ばれるタイプの抗うつ薬を使用することもあります。 薬物療法の効果が乏しい場合も多く、その結果、様々な種類の薬剤が多量に投与される場合があります。そういった場合はそれぞれの薬剤の効果を見極めつつ、減薬、整理を行うこともあります。
精神療法
症状が悪くなるきっかけや状況、症状が良くなる因子を明確にし、症状が軽くなるような行動を促していきます。 また、症状の原因となるストレスについて理解したり、対処法を考えていくことも大切です。
心身症とは
身体の症状や病気の中で、その発症や悪化させる誘因に心理社会的な要因(感情や性格などの心理的要因や職場や家庭環境などの社会的要因など)が大きく影響しているものを心身症といいます。
心理・社会的な因子の中で最も大きいものは「ストレス」です。このことから、心身症は「ストレスが発症や過程に関わる身体の病気」であると捉えられています。
心身症の原因
心身症の発症や悪化には心理・社会的因子が関わっていると考えられています。そのメカニズムは十分に解明されていませんが、持続するストレスが中枢神経系(脳)を介して、生体機能調節系(身体の状態を常に一定に保つ働きをする生体内システム)に影響を与えます。 それがある程度続くと身体の働きや構造に異常をきたすと考えられています。 また、自分の気持ちや感情に鈍感になってしまい、ストレスを抱え込んでしまう人や、過剰適応傾向(ある環境に適応するために、やり過ぎてしまう、無理をし過ぎてしまう)などが心身症を発症する誘因となると考えられています。
心身症が認められる身体疾患の例
心身症の治療
心身症では身体の治療と並行して精神面の治療も行います。 ストレスが病状に影響するため、ストレスを軽減することも必要です。そのためには、自分が抱えているストレスが何であるかを探ります。
心身症の患者さんは自分の感情を無意識のうちに溜め込んでしまうことや、うまく言葉で言い表せないような状態に陥っている傾向があります。
信頼できる人に相談する、受診をした際に状況をお話しいただくなど、一人で抱え込まないよう、意識することも大切です。
それに加え、定期的にストレス発散を心がけることや規則正しい生活を送り、ストレスに対する心身の抵抗性を高めることも意識して頂きます。
不安、緊張、不眠などを認める場合は、自律神経のバランスが乱れてしまうため、薬物療法を行うこともあります。
※月経前症候群で、気分の落ち込みなどを認める場合は生理前10〜14日前から生理開始日まで抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI;パキシル®、ジェイゾロフト®、デプロメール®、ルボックス®、レクサプロ®)を少量内服することで症状の軽減を図ることもあります。
強迫症(強迫性障害)とは
強迫症は、ある考え(家の鍵をしめ忘れていないか、自分の手が汚れているのではないかなど)が自分の意思に反して何度も頭に浮かんでしまう強迫観念と、ある行為(手を何度も洗う、ガス栓や鍵を何度も確認するなど)を繰り返し行ってしまう強迫行為があります。病状によっては、確認行為(鍵がしまっているかの確認、手をしっかり洗えているかの確認など)に家族を巻き込むこともあります。 生活の大部分が強迫観念や強迫行為に影響されるため、行動範囲が狭まり、日常生活にも支障をきたします。
強迫症の原因
脳内の神経伝達物質であるセロトニンの働きに異変が生じるとことが発症の誘因になると考えられていますが、明確な原因は明らかになっていません。 また、性格、生育歴、ストレスや感染症など、多様な要因が関係していると考えられています。
強迫症の症状
強迫症で認める代表的な強迫観念、強迫行為は以下の通りです。
不潔恐怖と洗浄
加害恐怖
確認行為
儀式行為
数字のこだわり
物の配置などのこだわり
強迫症の診断
強迫症は、血液検査や画像検査などでは異常は認められません。そのため、症状の程度、日常生活の困難さなどを総合的に判断して診断をします。
強迫症の治療
強迫症の治療には認知行動療法、薬物療法を組み合わせて行うことが効果的であると言われています。
認知行動療法
不安が生じても確認行為などを行わずに、あえて不安な状況を経験してもらうことで行動を変えてゆきます(汚いと思うものを触っても手を洗わないで我慢する、一度鍵の確認をしたら、その後は施錠の確認行わずに我慢するなど)。
こうした治療を続けることで、強い不安が少しずつ弱まってゆくことが期待できます。
初めから全てを我慢することは負担が高く、継続が困難な場合が多いため、状態に応じて徐々に我慢する度合いを増やしてゆきます。また、この治療法は薬物療法を行い、症状をある程度改善した上で行うことが一般的です。
薬物療法
抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI;パキシル®、ジェイゾロフト®、デプロメール®、ルボックス®、レクサプロ®)や抗不安薬等を用い、不安の改善を図ります。
薬物療法の効果が出てくると、以前は不安であったことや頭に浮かぶ不安が少しずつ減ってゆき、落ち着いて生活を送りやすくなります。
認知症とは
認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能(記憶力、言語能力、判断力、計算力、遂行力など)が低下し、日常生活全般に支障が生じる状態をいいます。 単なる物忘れだけではなく、仕事や家事など普段やってきたことのミスが増える、お金の勘定ができなくなる、慣れた道で迷う、話が通じなくなる、憂うつ・不安になる、気力がなくなる、現実には見えないものが見える、妄想があるなどのサインが出ているときは、認知症の可能性があります。
認知症の原因
認知症の原因は様々です。例えば、脳血管障害、脳外傷、脳腫瘍や脳炎などで、脳の広い部分が侵されると認知症が起こる可能性があります。
いわゆる「認知症」の多くは、脳の老化と密接に関連した認知症性疾患です。
これらのうち、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症は三大認知症と呼ばれます(アルツハイマー型認知症:50~60%、血管性認知症:20~30%、レビー小体型認知症:10~20%、その他の認知症:10%)。
認知症の症状
認知症の症状には、脳の神経細胞の障害によって起こる「中核症状」、中核症状と環境要因、身体要因、心理要因などの相互作用の結果として生じる精神症状や行動障害である「周辺症状(BPSD; Behavioral and psychological symptoms of dementia)」があります。
中核症状
もの忘れ
時間・場所の問題
理解力・判断力の低下
家のこと、身の回りのこと
周辺症状(BPSD)
理解力・判断力の低下
認知症の診断
症状の経過から認知症が疑われる際は、認知機能検査を行い、認知機能の評価をします。
また、血液検査、画像検査(頭部CTまたは頭部MRIなど)で、脳の異常の有無を確認し、診断をします(画像検査は他の医療機関にて実施していただきます)。
認知症の治療
いくつかの認知機能低下をきたす疾患*を除き、認知症を完全に治す治療法はまだありません。
非薬物療法、薬物療法を組み合わせることで、残された機能を維持しながら、周辺症状(BPSD)に対する治療を行い、病状の進行を遅らせます。
適切な治療を行うことで、ご本人が穏やかに生活を送ることができ、介護者の負担軽減にもつながります。
※脳腫瘍・慢性硬膜下血腫・正常圧水頭症・脳血管障害等の疾患。他にも脳症や、薬の副作用によるせん妄状態など治療可能な認知症もあります。
非薬物的療法
周辺症状(BPSD)に対しては、適切な対応や環境調整、リハビリテーション等の非薬物療法が優先されます。
対応の基本は認知症の方の視点や立場に立って理解しようと努めること(つじつまの合わない話をしても否定や叱ったりせず、耳を傾ける)、得意なことや保たれている機能を維持、強化し、より良い生活を送れるように工夫してゆくことになります。
介護保険サービスを利用し、デイサービス利用等の必要性の検討を行います。
認知症の人が心地よく安心して暮らせるように自宅内の環境調整や生活上の工夫も有効です。
また、家族が介護をする場合は全てを家族だけで対応しようとすると、介護する側の負担も高まります。
完璧を目指さず、担当のケアマネージャーとも相談し、介護しやすい環境を作ることが大切です。
薬物療法
アルツハイマー型認知症の中核症状に対してはコリンエステラーゼ阻害薬であるアリセプト®(ドネペジル)、レミニール®(ガランタミン)、イクセロン®、リバスタッチ®(リバスチグミン)とNMDA受容体拮抗薬であるメマリー®(メマンチン)の4剤が中核症状に対して使用することができます。
レビー小体型認知症ではアリセプト®(ドネペジル)のみ保険適応が認められています。
注意しなければならない点は、これらの薬剤の効果は一時的で、認知症の進行を完全に抑えるものではないことです。
治療の主体は非薬物療法であり、薬物療法は補助的な治療法の一選択肢と考えてください。
血管性認知症に効果がある薬剤は今のところ存在しませんが、脳卒中の再発予防のために高血圧などの生活習慣病の治療が不可欠です。
非薬物療法でのコントロールが難しい周辺症状(BPSD)に対しては、抗精神病薬、抗うつ薬、漢方薬などを使用することがあります。
しかし、高齢者への薬物療法は嚥下障害、転倒、フラつきなどの副作用が生じやすいため、少量から慎重に開始します。
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)とは
レストレスレッグス症候群、下肢静止不能症候群とも呼ばれ、主に下肢(足)に不快な症状を感じる病気です。 夜眠ろうとベッドに入った際や、新幹線や映画館、MRIの検査などで、じっとしていないといけない状況の時に、足の内側からむずむず、そわそわといった、なんとも表現出来ない不快感が現れる病気です。 この不快感は足を動かすと和らぐといった特徴があります。
むずむず脚症候群の原因
症状の出現には、脳の神経伝達物質であるドパミンがうまく働かなくなることにより、症状が現れるのではないかと考えられております。
発症する原因は、明らかではない場合と、貧血などによる体内の鉄不足、透析(末期腎不全)、糖尿病、リウマチ、パーキンソン病、妊娠などが原因で起こることがあります。
むずむず脚症候群の症状
主な症状としては、足を動かさずにはいられない、むずむずする、虫が這うような感覚があるなどで、なんとも表現できない不快感が続きます。 じっとしているときに症状が現れやすく、足を動かすと少し楽になることがあります。 夕方〜夜にかけて症状が出やすいため、睡眠障害を起こすこともあり、むずむず脚症候群とは知らずに不眠を主訴に受診される方もいらっしゃいます。
むずむず脚症候群の診断
むずむず脚症候群の治療
非薬物療法
カフェイン、アルコール、タバコは症状悪化につながるため、できるだけ控えて頂きます。 質の高い睡眠をとるために、起床、就寝時間を規則正しくする、入浴して体を温める、寝る前に足をマッサージするなどが症状緩和に有効です。 また、原因となる基礎疾患が明らかな場合はそちらの治療を行っていただきます。
薬物療法
体内の鉄分が不足すると発症することがあるため、採血を行い、血中ヘモグロビン、血中鉄などを測定します。不足しているときは鉄剤の処方や市販のサプリなどで鉄分の補充を行なっていただきます。
鉄の補充や非薬物療法にて改善がない場合は、薬物療法を検討します。
むずむず脚症候群に使用できる薬剤は3種類あります。
ドパミン受容体作動薬
抗けいれん薬
不眠が強い場合は、睡眠薬などの投薬も合わせて行う場合があります。